脳波のなぜ? Q&A  その3

 
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脳波のなぜ?その1
脳波のなぜ?その2

脳波の異説
脳波の誤解?

“ゲーム脳の恐怖”の脳波について


Q7;前頭部の脳波だけでいいか?                           

臨床脳波検査では、脳波計を使用して全頭もしくは必要な部位の脳波を記録するが、医学系以外の分野では病気を診断するわけではないので、α波およびβ波だけをみる目的で前頭部(Fp1,Fp2)の脳波だけをとっていることも多い。医学用ではない「簡易型脳波計」という名称などで市販されているものの多くはこれである。

すでに述べてきたように、正常成人の脳波は、安静閉眼時においては両側後頭部優位にα波が出現し、多くの場合前頭部では小さいかほとんど出現しない。下図は、同側耳朶(A1,A2)基準で記録した正常成人の脳波(全チャネル同一感度)で、左半分が閉眼、右半分が開眼である。閉眼時は、α波が後頭部O1,O2を中心に高振幅で出現し、前頭部では非常に小さい。したがって、Fp1-A1のように前頭部だけの脳波ではα波の検出率が低下するうえ出現率などの精度を高くすることも容易ではない。なかには前頭部にはほとんどα波が出現しない人もいる。一方、開眼時ではα波は消滅し、ほとんど低振幅のβ波だけになっているが、Fp1,Fp2には筋電図が入っている。この例では筋電図はそれほど大きくないが、開眼時にはFp1,Fp2にかなり大きな筋電図が入ることも多い。また、この例では入っていないが、下のQ8に示す図では瞬目による大きなアーチファクトが記録されている。また瞬目以外の眼球運動によっても大きなアーチファクトが入る。前頭部の脳波を評価する際には、このようなアーチファクトの処理が必須になり、それにはかなりの困難を伴うことも多い。その結果ようやく得られた脳波も、信頼性があまり高いとはいえない。

以上の理由から、、前頭部だけの脳波では、α波の振幅、出現率、あるいはβ波との比率を検討する目的では適当ではないと考える。とくに、閉眼安静時や睡眠中はともかく、開眼状態での信頼性は非常に低くなる。簡易型の装置で前頭部だけの脳波をとっている理由として、ヒトの脳の高次機能に関わる前頭葉の脳波をみたいということのほかに、頭髪がなく電極を装着しやすいということが大きいのではないか。
Fp1,Fp2だけの脳波で論じられている時、脳波の原波形が示されていて、アーチファクトの処理方法が明示されている場合以外は、信頼性は高くなく、脳波の論文としての価値は低いといわざるえを得ない。
そのような一例を、脳波の誤解?Q6に示している。

  

Q8;前頭部の双極誘導Fp1-Fp2は役に立つか?                            

これは役に立たないといえる。

簡易型の装置ではFp1-A1のように耳朶基準でとっているものもあるが、中には、Fp1-Fp2の双極誘導で1チャネルだけの記録をするものがある。
上図の最下段にFp1-Fp2の双極誘導を示している。Fp1-A1では閉眼時には前頭部にも小振幅ながらα波が出現しているが、Fp1-Fp2ではまったく現れていない。脳波は正常な場合、近傍の部位や左右の対応する位置での波形は相関性が高いのが普通なので、Fp1-Fp2の差分では相殺されてほとんど表示されなくなってしまう。もし大きな波形が現れるとしたらてんかんのスパイクなど局在性の異常な脳波が出現した場合である。β波はα波ほど相関が高くないのである程度出てくるが、β波は元々が小さいのでやはり非常に小振幅でしか現れない。しかし、筋電図は近傍でも相関が低いので差分をとっても大きく現れる。右側の開眼時は表示されている波形のほとんどが筋電図である。
下図は全体が開眼時で、上の場合よりも筋電図が大きく、かつ瞬目によるアーチファクトが4回入っている。Fp1,Fp2は筋電図と瞬目アーチファクトがほとんどである。瞬目アーチファクトは左右で相関があるのでFp-Fp2の双極誘導では減少するが、筋電図は減少しない。したがって、表示されているのは筋電図などのアーチファクトだけである。
したがって、正常脳波を評価する場合、Fp1-Fp2の双極誘導は役に立たない。

 
   

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